起業家支援には大きく二つの側面がある。
一点目は、仕組みを作ること。スタートアップは想いをベースに仲間で始めていることが多い。そこに新たな社員が加わり、売上が作られていき、オペレーションが複雑になってくると、戦略構築、数字の管理、評価や権限分担など組織の管理など仕組みづくりが必要になってくる。オペレーション面だけではなく、会社のビジョン・ミッションやそのためのステップなどを社員全員で共有するためにも、伝える術としての言語化が必要となってくる。
二点目はソフト面でのサポート。想いが強い人が集まるまた、日本のNPOの場合は、企業に比べて決して高水準とはいえない報酬体系(これを変えるべきであるという別問題はあるが今回の論点から外れてしまうためここでは書かない)、IPOなどの将来の大きな報酬の可能性を見込めず、事業や起業家に対する想いで働いている方が多い。
想いが強い人が集まり他に縛るものがないだけにしばしば衝突も避けられない。また、比較的経験が長くない方が多いことも手伝い議論を深めていったり合意形成を行っていくことに長けている組織も稀である。組織内のコミュニケーションが円滑に進むためのサポート、MTGのファシリテート、社員のモチベーションの向上と持続が必要となる。
私は上記は車の車輪のようなものであり、どちらか片一方だけでもうまくいかないと考えている。二点目はタスクベースでの切り出しが難しく専門家やコンサルタントに部分的に行ってもらうこともできないという点から難易度が上がる。ソフト面でのサポートは第三者にはできないという人もいるが、逆に第三者にしかできないこともあるのではないかと思う。当事者同士では感情面なども手伝って難しくなっているコミュニケーションをつなぎ合わせてあげたり整理したりしてあげるのは第三者にしかできないことだ。
また、これを行うためには信頼関係の構築が非常に重要となる。ロジックや仕組みだけではなく、本当にオープンになってもらい人間関係を変えていくためには、安心・安全にものを言える環境があり、本当に抱えている課題を共有してもらい解決策を共に考えること。
私の起業家支援を振り返ると1点目はもちろんだが、2点目を得意としていたのではないかと思う。また、前職を退職する際に一緒に仕事をしていただいた起業家に自分の価値みたいなものについて聞いてみた。戦略づくり、数字づくりや人材採用など仕組みづくりも結構行ってきたのだが、意外とそういった面は出てこず、なんでも相談できた存在や許される空気を作ってくれたといったようなソフト面があげられることが多かった。
仕組みづくりだけでもなく、コミュニケーションコンサルタントでもない存在になれるかどうかが起業家と組織を支援するには重要であり、自分はそういう存在でありたいと思う。