時間管理の重要性と難しさ

出口 治明さんが著者である「教養は児童書で学べ」という本を読んだ。その中で紹介されていた「さかさ」と「モモ」が印象的だった。「さかさ」は何でも逆になっている世界が描かれた本。自動車のボンネットは後ろに、屋根は下にあるといった感じだ。価値観も逆になっており大人が休んで子どもが働いていたり、健康な時にお金を払い病気になると払わなくて済む。

「モモ」は時間の管理者という集団がいて個人個人の時間の効率化を行っていくと、逆にどんどん時間がなく感じていくというもの。現代社会にも通ずるものがある。Technologyの発展などでいろんなことが効率的に行われるようになってきている一方で現代人は時間にもこころにもゆとりを失くしつつある。自分に当てはめてみてもそう言えると思う。毎日時間が足りないと思いながら生きている。今日あれをやってこれをやって、いつまでにあれをやってこれをやって。

最近感じているのは、自己管理の重要性とその難しさ。時間の使い方、精神的や肉体的な体調の保ち方など。20代のころは多少無理をしてもすぐに一晩寝ればリカバリーできるが年齢を重ねるとリカバリーが効きにくくなるだけに管理が重要になってくる。特に時間管理が難しい。予定を立てても思うようにものごとが進まなかったり毎日予定外のことが入ってきたりして優先順位をつけなおし続けなくてはいけない。あまり効率化にこだわりすぎても上記のモモのようになってしまうし、かといって行き当たりばったりではものごとは進まない。うまく時間管理をしつつプロセスそのものも楽しめるようにするのは今年の抱負の一つ。

一日のスケジュール

一日のスケジュールの中でどういった類の仕事を行うかをなるべく決めておいてスケジュールを立てるようにしている。例えば、朝はなるべく作業に、ミーティングはなるべくランチから午後にかけて、夕方は一日を振り返って纏め、それ以降は情報のインプットといった具合だ。もちろん、ミーティングや作業は日程や締め切りを自分でコントロールできない場合もあるが、可能な限りスケジュールをコントロールするようにしている。

思考プロセスのエントリーで積み重ねについて書いたが、こういったルーティンを作っていくことで積み重ねがされていくと思う(あまりルーティンという言葉は好きではないのだが)。こういったやり方も若い時はしていなかったことの一つ。やってみると、どうしても目の前のことを先に片付けたくなってしまうため上手く時間を管理するのは意外と難しい。そういう時は、本当にその仕事はいまやるべきものかと問いかけるようにしていて、また、スケジュールが決まっていると段々作業などもそれに合わせて組んでいくようになる。

仕事の中身

今週スタートアップとの定期ミーティングの中で、誰のため、何のための仕事なのか考えて仕事をするということについて学ぶ機会があった。

あまり具体的には書けないが、皆が忙殺される中、大事なお客さんのための仕事が作業化され誰かが行ってくれるのを待っているという状況となってしまっていたように思う。

仕事をしていると何かをつくること自体が目的になり本来の目的からずれてしまうことがある。また、本当に中身をよく考える前に、こういうものだから誰々次第だよねとか誰かの意見を聞くまで待とうといったような安易な結論を出してしまうこともある。そうすると、決断が無駄に先延ばしになっていく。そういえば、私が学んだB-schoolで「depends on~」は大人の言い訳という教えがあった。こういうことを言っていたのかもしれないなと思う。Reasonableな範囲であれば、多少の推測を含んでいても一歩踏み込んで考えることが提供相手に対しての仕事の質を高めるように思うし、価値のある提案ができる気がする。

投資クライテリア

投資をする際のクライテリアというものがある。代表的なものだと経営陣のリーダーシップ、ビジネスモデルなど。投資家によってこういうものを作る人たち、そうでない人たちがいるが、個人的には作っておくと良いと思う。本当に全てが通じ合った仲間だけで投資を行っていれば良いのだが、複数の人間が集まり始めると少しずつ意識が違ったりする。案件を多数見始めるといろんなタイプの案件や情報が入ってくるので、その際に常に立ち帰れる軸を持っておくと有益である。

現在、投資先経営者とこういったクライテリアを作っている。昨日、その経営者との会議の中でクライテリアの必要性について議論する機会があった。自分の過去を振り返ってみると、投資先DD中に自分たちのクライテリアとの合致性について時間を使って考えたことがある。世の中完璧な人や会社などはないので、DDを行なっていると当然色んな欠点や弱みも見えてくる。ただ、そういった際に自分たちが大事にしているものとの一致性や改善性があるのかを考える際に役に立った。

いくつか実績を積んでマーケット状況をもわかってきたころ、新規投資先を探していくのに自分たちのクライテリアで良いのか見直した時期もあった。指針を考えるためには役に立ったと思う。

また、投資後に振り返る際の観点としても有効だ。振り返りには成功か失敗かといった単純なものではなく、当初の仮説としてどういう見立てをしておりそれが実際どうだったのか、また仮説と違ったのであればそれはなぜ起きたのかといったことをラーニングすることが大事だと思う。

合宿・オフサイト

企業や組織で合宿やオフサイトを行うことがある。オフサイトとは通常の業務から離れた場所で長い時間を取り、日々の仕事より少し大きな目線でいろいろなことを話し合う機会を設けるために行われる。宿泊して1−2日がっつり行うこともあるし、トピックも組織のミッションのようなものから個人の考えまでさまざまがものが取り扱われる。

私が支援していた組織の管理職の方たちとオフサイトをしたことがある。この組織の場合は、組織は赤字になり社員が足りないという状況で、さまざまな業務が増える中日々の業務に追われ社内のコミュニケーションや社員の目線に少しずつずれを感じておりオフサイトを行おうということになった。

オフサイトは大きな視点で話す分、明確な論点が最初からあるケースは少なくファシリテーションが成否の鍵を生むといっても過言ではないと思う。この時は、私はグループディスカッションの議論のファシリテーションを行なった。ポストイットを使ったり、敢えて話をせずに個々で考える時間を作ったりといろいろ行なった。

普段の会話や議論では出てこない皆が奥底に抱えているような疑問や真の課題を引き出せるところがオフサイトのような場の良いところであり難しさでもあるのではないかと思う。

その後のアクションにまで繋げることが目的の場合、違った観点や意見を持った人たちの合意形成をはかることが最終的には必要となってくる。合意形成を図るために大事なのは意見を出させ議論をしつくせるようにすること、そのために意見を言うことをためらうようなことがない安心感のある場づくりをすることだと思う。最終的には何かの案に収束させるのだが、議論をしつくしていることで当事者意識と納得感が生まれ、これらがあるかないかでその後案をしっかりと実施できるかどうかを分けることになる。

現在も、合宿をいくつか企画中だが、何を目的とするかそのためにはどんな場や議論の方法が良いのか考えている。

Portfolio careerという考え方

最近、ある方のブログでportfolio careerという言葉を知った。いくつかの仕事を持つということだが、それぞれの組織の役職を持ってある種社員のように働くので、フリーランスのようにプロジェクトベースで仕事を請け負うのともちょっと違う。

私も現在はそういった働き方をしている。自分の職業を聞かれた時にフリーランスというのもちょっと違う気がするし、法人を立ち上げたわけではないので自分の会社をやっているわけでもないしということで説明に困ることが多かったが、この言葉が近いのかもしれないと思った。

欧米に追いつけ追い越せである種目標が明確だった高度経済成長期では企業は社員に長く働いてもらえば業績も伸びたが、その頃とは違い、現在の企業は事業開発やイノベーションを必要としている。社員に兼業を認めるのはそういった理由もあると思う。また、テクノロジーの発展によりリモートワークなどもできるようになってきて兼業を行いやすい環境も整ってきた。

そう考えると、上記のportfolio careerというのはこれからの世の中に合った考え方ではないかと思う。しかしながら、経営陣(例えばCEO)が本当に兼業で務まるのかとか、まだ自分でも答えがない部分はある。

Authenticity

8月のとある日、スタンフォード大学院卒業生の3人によるソーシャル的な文脈から見たスタンフォードについての説明と、岐阜でNPOの事業継承を行なったという秋元氏を入れてのパネルトークに参加した。

一番記憶に残っているのはパネラーの一人だった立石さんが言われたAuthenticityという言葉。Stanfordの入学試験の一つあるエッセイには「What matters most to you」という設問があるそうだが、この問いかけを常に自分にしていくことで本当の意味でその人らしさとも言えるAuthenticityが身についていくのではないかとの話だった。

これにはちょっと納得。自分のパッションがどこにあるかとかこういった類の質問は多くの人にとってはすぐに答えが出てくるものではないが、日々の生活を楽しみながら頭の片隅にこういった問いかけをおいておくと、積み重ねていくうちに出てくるのではないかと思う。

逆に日々のやることが多く目の前のことを考えることで忙殺されていると中々こういったことは考えにくいもの。重要と思われないことを行わないということも決断の一つであり、そういった決断を行っていくうちに自分にとって何が重要か見えてくることおあるだろう。

インパクト投資を経済的に成り立たせるためには

最近考えていること。投資モデルとインパクト投資の関係。投資モデルは、規模の利益が成り立つ市場、大きな資金供給量があって成り立つモデルだなあと思う。これがインパクト投資でも成り立つのか。

今の構造だと経済的に成り立たない:規模が小さく、リターンが低いので従来のmanagement feeモデルが成り立たない。投資は、投資を行う人に依存し、レバレッジさせて一人当たり大きな金額を扱うモデル(知識集約型)。人がレバーとなっていることからいたずらに人を増やせない。インパクト投資を成り立たせるためには、規模を大きくするか、別の収入源を確保するかしかない。

結局バリューチェーンのどこかで労働集約的に人を増やすしかなく、投資規模を大きくするということは、投資先でより多くの人を増やすことを意味する。

別の考え方としては、コストを圧縮し単価あたりの利益を大きくすることが考えられる。人を増やす代わりにテクノロジーの導入によりコストを抑えることができる。

そうするとインパクト投資を経済的に成り立たせるためには、下記どちらかということになってくる。

1.規模が大きくなる市場 

2.テクノロジーを使って従来のコスト構造を革新的に変えれるような構造の業態

結局、従来の投資と似たような考え方になってくると思うのだが、これを変えるような革新的なやり方はあるのだろうか。

経営支援

投資後の経営支援のやり方にはいろいろな意見があると思う。スタートアップはリソースが乏しいし、仕組みもあまり整っていないというのが常である。いろいろな営業資料や社内規程を作ったりすることもあれば、組織作り、戦略、採用、といった大きな仕組みづくりの支援をすることもある。ただ、重要なのは真の課題を拾うことだと思う。本当の課題は表面には現れていないことが多い。それをを拾うためには、経営者との対話を重ね様々な課題を整理して本質的な問題がどこにあるかに気づき・気づいてもらうことが必要となる。それが見えてくれば、解決のためのプロジェクトを考え時間軸や実行者を選定し回していくということができる。

一度、これが問題だと思って取り組もうとしていたことがなかなか進まず困ったことがある。これをやりましょうねと経営者とは合意するのだがその後なかなか手がつけられないのである。経営者は山のような課題とやることを抱える中で優先順位をつけながら物事を行っていかなくてはいけないので本当の課題と思っていなければそれは後回しになっていく。そんなことだったと思う。

私はこれまでスタートアップを支援する中でいろいろな経験をさせてもらったと思う。規程作り、社員採用、組織体制作り、戦略策定、事業撤退を含む事業の整理、財務、予算策定、販売など。また、多くは人間関係問題の悩み相談だったり、コミュニケーションやミーティングのファシリテーションを行ったこともある。

いずれの場合も、取り組み始める前に経営者や関わる人の納得感を作れるか、そしてその場しのぎの対策ではなく長期的に役立っていくものを作れるかが重要だと思う。

インパクト投資のジレンマ

先週、社会的投資を行っている投資先との定例会で今後どのようにインパクト/事業を拡大させていくべきかという話をした。

投資の活動自体は投資担当者など人が行うものであり、投資後の経営支援など一件の投資にかけるリソースが多くなればなるほど人への依存性は高まり”人”がボトルネックとなる。では、人を容易に増やせるかというとかけれる資金の問題であったり、能力を持った人を集めれるかという問題がありなかなか難しい。

一件の投資にかけるリソースをなるべく減らしたくさん数を打ち、その中で一件、二件の大成長を狙うという方法も考えられるが(VCでこういうモデルを採用しているところもある)、社会的投資の投資先に多い地域や社会に影響が大きいような投資先の場合そういった目線で投資を行うことが良いとは思えない。

一件あたりの投資金額を大きくするというのは一つの方法。金額を大きくするということは、それを受け止めれる投資先を対象にするということであり、つまり投資先の規模(人数など)が大きくなる。自分のところで増やすことが難しい人的資源を投資先の方で増やそうということである(自分のところの問題が資金でないという前提だが)。または、投資先側で人を増やすのではなくテクノロジーを活用するという考え方もある。人を増やすのではなくテクノロジーで代替できる仕事であればレバレッジをかけた成長が容易となる。ただしこれは(少なくとも現在では)人の創造性や能力に依存しないような、テクノロジーが担える仕事の枠組みが必要。投資という仕事では中々難しい面があるが投資先にそういう企業があれば投資のインパクトを大きくすることができる。

投資金額を大きくする以外に、今のところ考えられるのは、他者との協業というところだろうか。能力を持った人が他者にいるという前提が必要となるが、他者と協業しすることで拡大というものは可能になるかもしれない。

こういった議論は、私の前職でも行ったことがある。投資金額を大きくするという議論があったのを覚えている。過去に私が働いた組織では、投資金額を大きくする方向に舵をきったところもあった。世界のインパクト投資やベンチャーフィランソロピーの業界ではこれが大きな流れとなっている。こういう戦略をとるところが出てきても良いのだが、そのまじゃくに合わなくなってくる企業や団体はどうなるのかという点はエコシステム全体として考えなくてはいけないのではないだろうか。