シンガポールVCモデル

コロナの影響で「シンガポールVCモデル」が今後変わっていくだろう。東南アジアのVCはシンガポールに集中している。日本企業でもシンガポールにオフィスを置いているところはいくつかある。シンガポールでは国内市場は少なく大きな市場は国外にあるため、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアといった近隣の国を飛び回り投資や経営支援を行うというのが代表的なやり方だ。私がフィリピンで投資していた時もそういったVCの人たちと良く会っていた。ただし、コロナによってそういったやり方は少なくともこれから数年はできなくなる。私が過去に属していた組織があったスイスも似ている。

一方で、雇用形態や肩書きにとらわれない働きかたで働く人が世の中には増えてきている。海外では、比較的若い頃にインパクト投資を経験し、その後別の仕事をしたり独立したりする人も増えてきた。シンガポールから発展途上国に投資をするのではなく、現地でのプロフェッショナルをある種ゆるく繋げるような組織、レガシーな組織ではなくそんな組織形態が可能となるかもしれない。

環境を創る

ある人と社会を変えるには環境を創る力が重要だと言う話をした。環境をつくるって定義が難しいが、一つのことを専門的に極める力ではない。関係者とのコミュニケーション力、相手のモチベーションを向上させる力、共感力、傾聴力といったいろんな要素が絡まって関係者が力を発揮できたり成長する環境を創っていく。

私はこれまで特に早い段階にある組織の組織づくりに関わってきたが、上記は組織づくりに通ずるところがある。個々の集団や強いリーダーが組織を引っ張っていく、ルール形成や組織としてどう力を発揮するかガバナンスを含めた仕組みが作られ、個々の成長、組織間や個人間のシナジーを促す仕組み作りが必要となる。第一成長期、第二成長期といった感じだろうか。ビジネススクール時代の友人で卒業後アブダビでスタートアップをCOOとして成長させた友人が自分のやっていることはウィニングチームをつくることと言っていたが、これらもその一環だろうか。

スタートアップの早い段階は強いリーダーシップをもった起業家が組織を引っ張ることが多い。仲間が増えてくると課題をリフレーミングしながら枠組みを作っていき組織が機能するようにしていくことが必要となり、その後各チームのリーダーとも呼べる人たちを中心とした組織づくりが必要となってくる。ここで難しいのは、周りの人の意見を大事にしようとして聞こうとし過ぎると、自分にキレがなくなると感じることがある。それによって自分らしさを失ってしまうのか。

一方で自分の世界観みたいなものがあるのも環境づくりには重要な気がする。こういうのをthought leadership と言うのだろうか。特に内部の話だけにとどまらず外の人を巻き込むにはそういった力も求められるのかもしれない。

心の声を聴く

NYC在住のアーティストYagullのKanaが東京に来ており、昨年のイベント用のビデオ編集をしてくれた友人と一緒にランチをした。

印象に残ったのは、彼女のスランプ時の話。(特にクラシック業界ではよくある話だそうだが)とにかく先生からネガティブによく怒られていたらしい。そして散々練習してきたのに大事な受験の際に頭が真っ白になってピアノが弾けなかったとのことだった。

その後、新たについた先生から言われたのが、「あなたのピアノの音は、間違えないようにひこうとしている音に聞こえる」と指摘があった。正しくしたい、人から認められたいということが動機になっていると本当に良いものが出てこない。これは、ピアノの世界だけでなく一般的な教育やまた仕事などにおいても同じではないかと思う。私も経験したことがあるが、間違えないように人から怒られないようにということが動機になるとどんどん消極的になるし、パフォーマンスも良いものがでなくなって空回りしていく。

それから、彼女は何年もかけて「心の声を聴く」ように努めたとのこと。心の声が奏でる音を弾くといったことをするらしい。この話を聞くとYagullの音楽感も納得できる。

自分の心の声を聴くというのはとても難しいこと。あるべき論、やっちゃいけないなどといろんなことがいろんな理由をつけていく。本当にそれができるようになると素晴らしいことだと思う。

人に任せること

人に任せるって難しい。正月休みに起業家の友人と会っていてそんな話になった。マネージャーと部下の関係でもこの問題はあると思うが、自分の会社となるとなおさらだと思う。人に任せて何かが起こると小さな企業だと会社の生き死にに関わる可能性だってなくはない。けど、一方で、delegationしていかないと、自分ができることだけだと限界がある。

年末からSapiensという本を読んでいるが、人が他の動物と決定的に違うのは抽象的な概念をコミュニケーションすることができ、それによって多くの人の意思統一を行なって協力をしあえることだとあった。なるほどなと思ったが、そう考えても、多くの人と協力するということがいかに大切なことかと感じる。

自分の会社でも個人事業主であっても、会社や仕事に自分を投影し、肯定されても否定されても自分自身にされているかのように感じてしまう。そうなると気にするべきでないことも気にしてしまって広がりがでない。彼女の場合は、そういった状態にあったが、ある時自分が経営者としてやらないことをきめてリスト化し、スタッフに権限委譲していったそう。自分を投影しすぎず、ある種少し距離をおいて自分の会社を見たことで、俯瞰したり先が見やすくなり上手くまわるようになっていったとのことだった。

法人というのは日本でも海外でも法的には人格を持つが、まさに、自分以外の人として見てケアしていくということができるかどうかというのが問われるのかもしれない。

Thinker

どんな仕事を行うにしても第一歩は思考から始まる。メールを書くにも、契約書を作成するにも、MTGを行うのもまずはそれを行うと頭の中で考える。頭の中で考えたことを行動に移すだけにそのプロセスについて考えることは重要ではないかと思う。

例えば、客観性と主観性。良く客観的分析が重要ということも耳にするが、客観的分析だけではものごとは決まらない。もちろん、客観的にいろいろな要素を分析することは非常に重要なのだが、客観的分析を経た後に主観的に一方の立場をとったり何かを決めたりすることでものごとは進むし議論を行うこともできる。

また、積み重ねも非常に重要だ。僕は、若い時はその場その場で力を発揮することが自分が価値を示す時だと思っていたこともあった。ただし、最近は積み重ねの重要さを感じる。一過性の力はある意味しれていて、インプット、アウトプット、振り返りというサイクルを積み重ねることで蓄積されていくものがあり、発揮出来る価値につながる。

最近はCautious Optimisticという言葉も自分で良く使う。要するに、事前に慎重になってよく考えるのだが悲観的にならないということ。特に、考える時は様々な可能性を考えて考えを張り巡らすが、行動に移す時は楽観的に行うようにしている。

多くの“一流”と言われる人たちと一緒に働くことができ感じたことは、皆上記のようなある意味基本的なことができているということ。テクニカルなことよりもこういったある種精神的な強さが重要だと思う。最近読んだThe Barcelona Wayという本に要石の習慣という言葉があった。研ぎ澄まされた重要な習慣が組織の文化を作っていくというものだ。これに通ずるところがあるのかもしれない。

インパクト投資とキャリア

先週末インパクト投資の仕事をしたいという20代の人からキャリアについて相談を受けた。彼はアメリカの大学を卒業後コンサルティング会社で仕事をしてきたが、自分のやりたいことはインパクト投資業界にあると思っているとのこと。

彼によると、世界各地で活躍している同世代の日本人同士でグループを作って意見交換を行う場を持っているとのことだった。

私がこの業界に飛び込んだ5ー6年前には少なくとも日本では私の周りではそういった”thinking alike”な人がいなかった。当時の私はビジネススクールの友人や世界と日本の状況のギャップを感じつつ、だからこそ海外に行く決断をしたのだが、彼の話を聞くと時代は変わってきたのだなと思う。

業界に人材が入ってくるようになれば、成果を高めることもでき、資金の流入にもつながり、しっかりとした業界として成り立つようになってくる。何のためかわからないけどお金を多くもらえるからといった軸だけで仕事や人生を決めるのではなく、違った軸を持って人生を歩む人が増えると良いなと思う。

アーティストと起業家

アーティストと起業家には共通する面が多くあると思う。特に強いパッションを基に何かを創り上げるという点は似ている。

私はYagullというアーティストを支援している。バークリー音楽院を首席で卒業しピアニストとギタリストのユニットで、二人はhug musicという音楽教室も経営している。彼女たちの持つ想いやビジョンの言語化を一緒に行った。ビジョンやコンセプトを言語化し、相手の持つintentionをクリアにしていく、また、そのために必要な道筋を考えるといったことは起業家支援と通ずる点だと感じた。

また、先日東京で行ったライブコンサートでは、アーティストと相談し、彼らの奏でる音楽に説明を加えることでオーディエンスにイメージを沸かせてもらいやすくし曲への共感度を高めるといったことを行った。プロのミュージシャンともなれば音楽を聞くだけで曲の良し悪しや共感度を高めることができるのかもしれないが、一般の人には曲の背景を知ることで入り込み方が変わり距離感をぐっと縮めることができる。

マーケティングや販売、規模が大きくなってくると管理面なども考えなくてはいけない。まさに企業の成長過程と同じである。もともと起業家支援とは違った文脈で始めたが、本質を見ると、世の中のラベリングとは関係なくいろいろなことが見えてきて面白い。

Yagull: https://www.yagull.com/
Hug Music: https://hugmusicny.com/

違ったコミュニティに繋がっている価値

違ったコミュニティにつながっていることが価値になる。先日クライアントとのMTG中にでてきた話。教師を派遣する教育事業を行っている組織で、派遣する教師へのサポートとしてあがったアイデアだ

また、別の人との別のMTGでも同じような話があった。自分がcomfortableと感じれるコミュニティにいることが重要という話。高度経済成長時代は特に仕事に関しては一つの場所で効率的にまた多くの時間を使うことが良しとされていたし、そうすることで企業も国も成長し国民は豊かになっていった。教育制度もそういった考え方をベースに設計されたのではないかと想像する。今後は企業にもより新たなビジネスチャンスを創ったりすることが求められていく中、皆に一様に自社で多くの時間を使ってもらうことではなく外からアイデアを持ってきたりすることが求められる。多様な働き方が認められてきている要因にはそういったこともあるのではないかと思う。

私自身もいくつかのコミュニティにつながっていて違った業界やテーマであっても共通することは多くありアイデアや考え方を活かせることがあると感じる。そう思うとコミュニティ創りというのはとても興味深い。

「諦める」

とある参加したイベントで、スピーカーの方が「諦める」ということを学んだと話されていた。諦めるの語源はあきらかにするということいあるそう。

ネットで諦めるの語源を調べてみると、大谷大学のウェブサイトによると、仏教の教えから来ており「あきらかにする、つまびらかにする」とある。つまり、ものごとの道理をわきまえることによって自分の願望が達成されない理由をあきらかにし、納得して断念する。サンスクリット語では、真実、真理という意味にあたるそう。現代で使われるように、望んでいることを途中でやめるというだけの意味ではない。

一見、こうありたいと願う向上心を持つことと相反するようにも見えるが、理由をあきらかにして断念するということがそうなくさせるのかと思う。無駄に背伸びをするのではなく、自分にできることをあきらかにしていく、これをおこなうためには振り返りを行い自分についての理解を深めていくことが大事なのだと思う。

研修

振り返ると「研修」や「トレーニング」と呼ばれるものを過去に受けたいろいろと受けた。「リーダーシップ研修」、「メディアトレーニング」などからビジネススクールの2年間も広い意味では研修の一つだ。ただ、必ずしも受けてもすぐに実戦で使えないものもありその時にはその研修の狙いや活かし方がイメージ仕切れないものもあったが、そういう場面に実戦で出会ったり、自分が研修を企画する立場になるとよくわかる。

現在、計画している合宿のコンテンツを企画する中でいろいろ考えてみた。調べる中で学んだのが「関係の質」、「議論の質」、「行動の質」、「結果の質」という考え方。これら4つは「関係の質」をスタートにしたサイクルのようなものであり「結果の質」を変えるためには順番に改善していく必要があるという考え方。「関係の質」は、議論相手の価値観やバックグラウンドを理解しているか、遠慮や不要な心配をせずに議論できる関係性かといったことが含まれる。良い議論の場に入るとお互いの意見が重ね合わされ昇華していくような感覚がある。そういった議論の進め方にはテクニカルな側面も大いにあるのだが、こういった環境設定も重要だと日々感じているので納得感があった。

実はこういったことは過去に私が受けたリーダーシップ研修でも言われており、経験や価値観の共有の重要性やメンタルモデルの破り方などといった中で学んでいた。その時は理解はできたものの(振り返ると)イメージしきれておらず、今回企画する中で改めての気づきとなった。